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門眞妙 「叶子」(顔出しパネル)

  門眞妙さんの「叶子(かなうこ)」である。池袋のあまり人が来なさそうな場所で展示されていたのでどうしてもみんなに見て欲しくて持ってきた。案の定すごく評判が良い。私の鼻も高いぞ。そしてやってきたお客さんのうち二人がこの作品を実は狙っていたのだという話を聞いた。一人は展示職員に聞いたら「売り物じゃないんじゃないですか?」と言われて諦め、もう一人は気づいた時は誰か(飯島)に買われていた、のだった。私は展覧会初日に会社をズル休みして向かい、値札もなく職員もいなかったがとにかく販売してくれそうな関係者を片っ端から当たって見積もりを取ってもらって購入したのだ。熱意が違うぜ。しかし、あまりに早く買い取ったため逆に人目につかなくなってしまった。ここから人の目に触れさせるのは私の役目である。そしてどうだ。いいものだろう。着物の描写が本当にヤバい。

  顔出しパネルである。顔を入れると楽しい行楽地によくあるパネルだ。それをあろうことか美術品で行っている。しかも元がアニメ風の描写なので人間の顔だと縮尺が合わず、どうあってもうまく入らない。不細工になる。だが今回に限ってはそれでいい。真作と贋作の間を行き来する本展で、このパネルに顔を入れることで自分が門眞作品の贋作になれるのだ。後ろの絵と比べて自分の不細工さにがっかりするところがこの作品の要諦である。それに単純に楽しい。Twitterで「顔出しパネル置いてまーす」というツイートをしたら顔出しパネルマニアの人が来て写真を撮って帰っていった。顔出しパネルがあればどこにでもやってくるらしい。世の中にはいろんな人がいる。

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